特集
2020.08.31
キャリアセンター訪問 14
「オール龍谷」で学生のキャリア支援を強化。
龍谷大学 キャリアセンター長 インターンシップ支援オフィス長 経営学部教授 松永 敬子さん

龍谷大学
1639年に京都・西本願寺境内に創設された教育機関「学寮」にはじまり、2019年に創立380年を迎えた龍谷大学は、大学9学部・短期大学部・大学院10研究科の総合大学に発展し、約2万人の学生が学んでいます。建学の精神である「浄土真宗の精神」をわかりやすく伝え、龍谷大学ならではの人材育成につなげるための新たな行動・実践哲学として380周年に「自省利他」を発信し、仏教版のSDGsも推進しています。この自省利他を「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」姿として実践した親鸞聖人に学び、実践できる人材の育成を教育理念・目的にも掲げ、最高の教学環境を提供することを目指し、先進的な取り組みを続けてきました。また進取の精神は今も脈々と受け継がれ、近年ではキャリア教育を含むカリキュラム改革やインターンシップ制度の拡充等、「オール龍谷」で教育体制の充実に力を注いでいます。今回は、同校のキャリアセンター長兼インターンシップ支援オフィス長であり、自ら経営学部で教鞭を振るっていらっしゃる松永教授(写真中)に、龍谷大学独自のキャリア支援の方針等について、詳しくお話を伺ってきました。
2020年度より全学部の1年次正課科目内で、キャリア教育を実施。
――龍谷大学の校風や特徴についてお教えください。
一番の特徴は「建学の精神が形骸化していない大学」だということです。本学の建学の精神は「浄土真宗の精神」であり、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間の育成を実現するために、「平等」「自立」「内省」「感謝」「平和」の5つの心を持った人材の輩出を目指しています。学生にもわかりやすいこの5つの心は、1年次の正課必修科目でもある「仏教の思想」において学び、学生生活のあらゆるシーンで自らの言動と結び付けやすく、身近な教えとして学生に深く浸透しており、これが本学の真面目で誠実な校風や学生気質に色濃く反映され、人材育成にもつながっていると考えています。
また創立380年を迎えた昨年に「自省利他」という新たな行動・実践哲学を発信しましたが、「自らを省み、他人に尽くす」という教えを学んでいく中で、社会課題に対して自分は何ができるのかといった問題意識を持つ学生が多いのも特徴です。事実、関西の大学発スタートアップ企業数で本学は京都大学、大阪大学に次ぐ3位※となっており、なかでもソーシャルベンチャーと呼ばれる社会課題の解決を目指して起業するケースが相次いでいます。本学では1991年に産学連携を手掛ける龍谷エクステンションセンター(REC)を設立し、2019年にはユヌスソーシャルビジネスリサーチセンターを創設する等、社会・地域課題の解決を目指す学生への様々な支援を展開しており、起業家精神(アントレプレナーシップ)を持った人材育成に資するプログラムの展開等、キャリアセンターとも連携を強化しています。キャリアセンターとしては、起業を目指す学生のみならず、多くの学生にもそのマインドは伝えていきたいと考えています。
※出典:経済産業省「令和元年度大学発ベンチャー実態等調査」
――就職だけでなく起業も学生のキャリアのひとつの選択肢として、大学全体で支援しておられるんですね。
これまでは「キャリア=就職」として語ることが多かったと思うのですが、「キャリア=将来設計」として捉え、就職のことだけではなく、「キャリア教育」と「進路・就職支援」を柱としています。社会人として生きていくため、一人ひとりが生涯向き合っていく「自身の将来設計」を早い段階から意識し、準備をすることが重要であり、大学教育における正課・正課外のすべての学びこそが、最大のキャリア支援であるということを、私達キャリアセンター職員だけでなく全ての教職員、そして学生が認識をすることが重要だと考え、様々な機会を通じて情報発信に努めています。もちろん、就職支援が主になりますが、起業だけでなく国内外への大学院進学等、学生の多岐にわたる進路についても関係部署と連携を取りつつ、支援をしていきたいと思っています。
本学ではその新たな一歩として、低学年次からのキャリア教育の重要性に鑑み、2020年度より全学部で正課科目内におけるキャリア教育の実施を始めました。これまでは学部によってキャリア教育に対する取り組みは様々でしたが、各学部の教務・キャリア担当教職員とキャリアセンターの学部担当職員が協働し、両輪となる形で実現に至りました。具体的には、全ての学部の1年次正課科目の演習等を活用し、本学および各学部のキャリ支援の方針や人材育成の方向性を学び、自身の4年間の学生生活や将来設計を考える場を短時間でも設定できたことは、本学のキャリア教育・支援にとって大きな一歩だと考えています。