採用学

著者:服部泰宏

弱小チームが強豪チームを凌駕した、『マネーボール』の世界。

 

『マネーボール』という物語をご存知だろうか。映画にもなったこの物語は、アメリカの、極めて資金力の乏しい弱小チームが、2002年にメジャーリーグ屈指の名門球団になったサクセス・ストーリーであり、第84回アカデミー賞でも6部門でノミネートされている。ストーリーについて、簡単に紹介しよう。

 

その昔、アメリカメジャーリーグでは、フリーエージェント制度が導入され、選手が自らの自由意思で、他のチームとの契約を結ぶことが許されるようになった。制度の導入をきっかけに、選手の球団間の移動が活発になり、その結果、選手の平均年棒が高騰することになった。一部の資金力が豊富なチームでは、大物選手を多数抱え込むことで、良い成績を収められるといった好循環がうまれ、一方の資金力が乏しいチームは良い成績を収められないという「負の連鎖」に陥っていたため、「野球はもはや、金銭ゲームになってしまった」とも言われていた。そんな、メジャーリーグ各チームが「金銭ゲーム」に四苦八苦していたころ、ヤンキースの3分の1ほどの資金力しかなかったアスレチックスという弱小球団が、西地区優勝の快挙を成し遂げた。通常であれば考えられない大躍進である。この躍進の秘訣は何だろうか。

 

当時のアスレチックスのゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンは、多額の資金を投じてスター選手を引き抜くのではなく、これまでの球界の常識に疑いの目を向け、「科学的な視点」で選手をスカウトした。例えば、バッターであれば、「打率」や「打点」で評価するのではなく、「出塁率」の高い選手をスカウトしていった。「打率」や「打点」は、例えば「たまたま野手のいない所にボールが飛んだ」り、「たまたまバッターボックスに立った際にランナーがたまっていた」といった偶然の要素に左右される可能性もあるが、「出塁率」であれば、偶然の要素が絡まず、また出塁することは勝利に繋がるからである。その結果、前述したようなヤンキースといったタレント集団を凌駕することができたのである。

次のページ:この物語から学ぶべき4つの視点。

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